
徐々に広まりつつあるソーシャルビジネスですが、どのような事業が成功を収めているのか気になる方も多いのではないでしょうか。
今回はソーシャルビジネスにおける成功事例についてご紹介していきます。
起業を目指す方は、新たなビジネスチャンスの糸口やアイデアを探すための参考にしてください。
株式会社ユーグレナは、日本のバイオベンチャー企業の一つ。社名にもなっているユーグレナとは、栄養素が潤沢な微細藻類のことで、これを使用した食品の開発を主な事業としています。
ユーグレナ社は、2005年にこの微細藻類の大量培養技術を確立し、それを使った機能性食品や化粧品などの開発を次々と成功させてきました。
日本のソーシャルビジネス成功例の一つとして、その取り組みを詳しく見てみましょう。
このプログラムは、ユーグレナを含んだクッキーをバングラデシュの子供達に届けることにより、現地の貧困と健康問題の解決につなげることを主なコンセプトとしています。
日本と同じか、それ以上の人口を抱えるバングラデシュですが、もともと経済状況は芳しくなく、貧困による子供の栄養問題は深刻でした。創業者である社長が、学生時代に訪れたバングラデシュで、現地の貧困状況を目の当たりにしたことで、この問題をなんとか解決できないかと考えたことがきっかけとなり始まったのが、このユーグレナGENKIプログラムだったのです。
2014年に発足されたこのプログラムは開始以降、2022年の段階で累計1500万食にも及ぶユーグレナクッキーの無償配布をしてきました。最初は首都であるダッカから始まったこのプログラムも、現在では地方にまで広がり、いまなおその取り組みは続いています。
現在では、現地のグラミン銀行との合弁会社である「グラミンユーグレナ」も設立され、日本への輸出を積極的に行うことにより、現地雇用の増加にも貢献しています。
ソーシャルビジネスの創始者とも言われるムハマド・ユヌス博士はバングラデシュ人初のノーベル平和賞受賞者でもあります。氏が創設したグラミングループと理念の面で共鳴した日本のユーグレナ社が、バングラデシュの貧困や生活改善に取り組むために手を取り合って創設されたのがグラミンユーグレナ社です。
バングラデシュは、その国民のほとんどが農業に携わっています。しかし作られる作物の質が高くなく、貧困はもちろんのこと、自分たちで食べるものとしても栄養面に問題を抱えている状態が続いていました。
そこで、グラミンユーグレナ社はこの問題を解決するために「緑豆プロジェクト」を立ち上げたのです。緑豆とは、日本でもよく目にするもやしの原料になる豆です。この緑豆はバングラデシュでも食卓に欠かせないものでした。このプロジェクトでは、バングラデシュ現地で緑豆の栽培技術や栽培量の向上を目指し、貧困を解消しつつ食料供給の安定化も狙うことを目的としています。
それと同時に日本にとっても、これまでそのほとんどを中国からの輸入に頼っていたところに、新たな供給源を作り出すことができます。
一つの取り組みによって、バングラデシュと日本双方にメリットがある、すばらしい取り組みと言えるでしょう。
ユーグレナ社のこれまでの取り組み、特にバングラデシュの貧困や食料供給問題の解決への動きが評価され、2019年に日本企業としては初めてWFPの事業連携パートナーに選ばれました。
これにより、ユーグレナ社は国連世界食糧計画から年間200万ドルの資金提供を受けることができるようになりました。さらにバングラデシュで栽培した緑豆は国連世界食糧計画によって買い上げられ、その緑豆を世界中の必要なところへ提供される仕組みも確立されたのです。
今後もユーグレナ社及びグラミンユーグレナ社が「人と地球を健康にする」という根本目標に向けて動き続ける限り、この強力な提携関係は続くでしょう。
グラミン社や国連食糧計画のように、コツコツと進めていくことで世界的な機関から協力を得られるケースもあります。。
もちろん、利益よりも社会的利益が出せるような明確なビジネス計画やビジョンを構築していることが前提のため、ご自身の考えと熱意をしっかり伝えていくことが必要です。
これから起業を目指す方は、身近なソーシャルビジネスの支援・投資機関について知っておくと出発しやすいのではないでしょうか。