自治体が実施する取り組みが、結果的にソーシャルビジネスを成功させた事例もあります。
今回は北海道ニセコ町の取り組み事業とその成果をご紹介していきます。

にこっとBUSは、会社ではなく地方自治体が主導して行ったソーシャルビジネスの成功事例と言えるでしょう。
町内を走っていた路線バスは、従来他と同じく時刻表があり、決められた時間に決められた路線を走っていくものでした。しかし、ニセコ町では過疎化による人口減もあり路線バスの利用者は年々減少していました。乗る人がいないのにバスが走るのは完全なコストの無駄となり、結果として運賃を高くせざるを得ない、という問題も。
また、利用者の大半である高齢者にとって、バス停に向かわなくてはならないことも負担になっていました。とはいえ、ただでさえ広い北海道で電車もないとなると、路線バスのような移動手段は町民にとって欠かせないものでもあったのです。
これらの問題を解決するために考えられ、生まれたのが「にこっとBUS」なのです。利便性の向上はもちろんですが、なによりも路線バスを、ただ人を運ぶための道具としてではなく、町内のコミュニケーションの場として町民に提供することをポイントにしています。さらに詳しく解説します。
にこっとBUSは特別な登録などを必要とせず、どなたでも利用できます。事前に電話予約をすることで、指定時間に自宅まで迎えに来て目的地まで送ってくれます。タクシーの迎車に似ている部分もありますが、複数の予約があれば町民同士での乗り合いになります。そこがコミュニケーションの場にもなるのです。
従来の路線バスのように、決められた場所にあるバス停間だけでの移動ではなく、自分で指定した場所へ送ってくれるところが大幅な利便性向上と言えるでしょう。
運賃は1乗降で200円となっており、それまでの路線バスよりも割安になっています。また、就学前の小児であれば無料、その他子供や障害者の方は半額となります。迎車してくれるタクシーが200円で利用できる、と考えたらその破格ぶりが伝わるでしょう。
にこっとBUSという名称は、町民への公募によって決められ、「利用するみんなが笑顔になるように!」という気持ちが込められています。
あらゆる目的に利用することができ、日常の買い物から学校への送り迎えと様々な用途で利用されているようです。

にこっとBUSは町民だけでなく誰でも利用できるので、観光の際の移動手段としても使うことができます。本来の目的とはまた別ですが、結果として観光客が増加すればそれは地域活性化にもつながるため、これもソーシャルビジネスという観点からは非常に良い面だと言えるでしょう。
ニセコ町自体は観光地としてはさほど有名ではありませんが、アンヌプリ国際スキー場などに町外から訪れる人は多く、電車で来る場合の移動手段としてにこっとBUSを使うことは可能です。
にこっとBUSをきっかけに、ニセコ町が観光地としても発展していくことに期待したいですね。
平成26年から運行を開始しているにこっとBUSは、国からの支援も受けながら現在も事業を続けています。結果として町民に新たなコミュニケーションの場の提供をしつつ、便利な移動手段として多く利用されています。
今後は自給エネルギーの利用を検討するなど、自然環境にも配慮した活動も期待されています。
地域住民に寄り添った解決策を柔軟に取り入れることで社会的利益への視野が広まり、新たな取り組みへ目を向けることができると言えるでしょう。
従来の考え方に捉われず、自治体と地域住民双方に利益をもたらすことのできた「にこっとバス」から、ソーシャルイノベーションのアイデアを得ることができるのではないでしょうか。
地方の過疎化や高齢化の問題はニセコ町だけに限らず、日本の各地で多く見られます。にこっとBUSの成功例が、そういった問題の解決へのヒントやきっかけになる可能性は充分にあります。誰にとっても損がなく、社会にとって有益なサービスであることから、自治体主導のソーシャルビジネス成功例として紹介させていただきました。